サウジ株が原油高で上昇、海運大手Bahriは9.5%高|対イラン制裁で週明け日本株はどう動く?
2026年8月24日
週明けの日本市場を前に、中東の株式市場が原油高と対イラン制裁への警戒に反応しました。8月23日(日)のサウジアラビア株式市場では主要指数TASIが1.1%上昇し、海運大手National Shipping Company of Saudi Arabia(Bahri)は9.5%高の37.30リヤルと、約20年ぶりの高値で取引を終えています。背景にあるのは、米国がイランへの追加制裁を準備していることと、ホルムズ海峡を巡る供給不安です。
まず結論:週明けは「原油高」と「供給回復」の綱引き
今回の材料を初心者向けに一言でまとめると、イランへの制裁が強ければ原油価格を押し上げやすい一方、サウジアラビアなどの供給が回復すれば原油価格を抑えやすいという構図です。
市場はどちらか一方だけを見ているわけではありません。実際、原油価格は高値圏にありますが、Saudi Aramcoはホルムズ海峡内のターミナルから原油積み込みを再開しています。つまり「中東の供給不安は続いているが、完全に止まっているわけでもない」という難しい局面です。
【事実】サウジ株が上昇、海運株Bahriは9.5%高
Reutersによると、8月23日のサウジアラビア主要株価指数TASIは1.1%上昇しました。素材株や金融株が買われ、Al Rajhi Bankは2.1%高、Saudi Arabian Miningは4%高でした。
特に目立ったのが海運大手Bahriです。株価は9.5%上昇して37.30リヤルとなり、終値ベースで約20年ぶりの高値を記録しました。
なぜ日本の投資家がサウジ株を見る必要があるのでしょうか。サウジ市場は原油収入との関係が深く、原油価格や中東物流への期待が株価に反映されやすい市場です。日本市場が休場している日曜日に中東株が動けば、月曜日の東京市場で資源株や航空株などが反応する際の「先行シグナル」の一つになります。ただし、サウジ株が上がったから日本株も必ず上がるという意味ではありません。
【事実】Brentは94.39ドル、WTIは87.06ドル
8月21日(金)の原油市場では、国際指標となるBrent原油が1バレル94.39ドル、米国WTI原油が87.06ドルで取引を終えました。Brentは前日比0.65%高、WTIは0.26%高です。
原油価格が上がっている大きな理由は、米国がイランとの取引を続ける国や企業に経済的な圧力を強める可能性があるためです。制裁によってイラン産原油が市場に出にくくなれば、世界で使える原油の量が減るとの見方が強まり、価格が上がりやすくなります。
初心者向け:なぜ「制裁」で原油が上がるのか
原油価格は、簡単に言えば「世界で必要とされる量」と「世界に供給できる量」のバランスで大きく動きます。イランは主要産油国の一つです。米国の制裁でイラン原油を買う企業や銀行、海運会社が取引しにくくなると、市場は将来の供給量が減ると考えます。
実際に供給が減る前でも、投資家が「これから不足するかもしれない」と考えれば先物価格は上昇します。これが地政学リスクによる「リスクプレミアム」です。戦争や制裁のニュースだけで原油価格が動くのは、この将来予想が先に価格へ反映されるためです。
【事実】一方でSaudi Aramcoは積み込みを再開
原油高材料だけではありません。Reutersは8月18日、Saudi Aramcoがホルムズ海峡内から原油の積み込みを再開したと報じています。8月12日から16日にかけて3隻のVLCC(大型原油タンカー)がJuaymahとRas Tanuraのターミナルで、それぞれ約200万バレルを積み込みました。さらに複数のタンカーが月内の積み込みを待っているとされています。
これは供給不安を和らげる材料です。イラン産原油が減っても、サウジアラビアやUAEなどからの供給が増えれば不足分の一部を補えます。そのため、原油が一直線に上がると決めつけるのは危険です。
次の最大イベントはベッセント米財務長官の会見
米財務長官スコット・ベッセント氏は、米東部時間8月24日午後2時に記者会見を予定しています。日本時間では8月25日午前3時です。焦点は、対イラン追加制裁の対象範囲です。
市場が特に警戒するのは、制裁がイラン国内だけでなく、イランと取引する第三国の企業、金融機関、海運会社などにまで広がるかどうかです。中国はイラン原油の主要な買い手であり、中国企業への圧力が強まれば、原油市場だけでなく中国株、人民元、アジア株全体へ影響が広がる可能性があります。
【MARKET EYE分析】日本株で恩恵を受けやすい分野
原油価格がさらに上昇する場合、最も分かりやすく恩恵を受けやすいのは資源開発株です。INPEXや石油資源開発のような企業は、原油・天然ガス価格の上昇が販売価格や収益期待の押し上げにつながりやすいためです。
資源権益を保有する総合商社にも追い風となる可能性があります。ただし商社は資源以外の事業も大きいため、「原油高=必ず株高」と単純化せず、為替や世界景気も同時に確認する必要があります。
海運株は少し複雑です。運賃上昇はプラス材料になり得ますが、戦争保険料、航路変更、船舶安全リスク、燃料費上昇はマイナスです。Bahriの急騰を見て日本の海運株を単純に同じ方向へ当てはめるのではなく、タンカー市況とコンテナ市況を分けて見る必要があります。
【MARKET EYE分析】逆風を受けやすい分野
原油高が続く場合、航空会社は燃料費上昇が利益を圧迫しやすく、JALやANAホールディングスなどは短期的に警戒されやすくなります。航空会社は燃料ヘッジを行っているため価格上昇が即座に全額コストへ反映されるわけではありませんが、原油高が長期化すれば負担は大きくなります。
陸運、化学、物流などもエネルギーコスト上昇が逆風になりやすい分野です。電力会社については燃料費調整制度や調達構成があるため影響は企業ごとに異なりますが、LNG・原油価格の上昇は市場心理上の警戒材料になりやすいでしょう。
原油高が日本株全体に効く「第二波」
日本はエネルギー輸入国です。原油高が長引けば輸入金額が増え、企業のコストや家計のガソリン・電気料金にも波及します。これが物価上昇につながれば、日銀の金融政策にも影響します。
市場では、原油高 → 日本の物価上昇 → 日銀の追加利上げ観測 → 円高圧力という流れが意識される可能性があります。円高になれば輸出企業には逆風となる一方、輸入コストの低下にはプラスです。つまり中東ニュースは、資源株だけでなく為替や金利を通じて日経平均全体へ波及する可能性があります。
次に見る価格:Brent95ドル、WTI90ドル
MARKET EYEでは、まずBrent95ドルとWTI90ドルを観測ラインとします。Brentが95ドルを明確に上回り100ドル方向へ進むなら、市場が制裁やホルムズ海峡リスクをさらに強く織り込み始めた可能性があります。
反対に、Saudi Aramcoなどの供給回復が進み、Brentが90ドル方向へ押し戻される場合は、地政学リスクプレミアムが縮小している可能性があります。価格だけでなく、実際のタンカー通航数と積み込み量をセットで確認することが重要です。
強気シナリオと弱気シナリオ
原油の強気シナリオ
米国の制裁が第三国企業や金融機関まで広がり、イラン原油の取引がさらに難しくなる。ホルムズ海峡の通航も低水準のままなら、Brent100ドルが意識されやすくなります。この場合、日本では資源株優位、航空・運輸・化学などには逆風という構図が強まりやすいでしょう。
原油の弱気シナリオ
制裁が市場予想より限定的で、Saudi Aramcoや周辺産油国の積み込みが増え、ホルムズ海峡の物流が徐々に正常化する場合、原油に乗っている地政学プレミアムが縮小する可能性があります。この場合は資源株の利益確定と、航空・運輸などコスト高懸念銘柄の買い戻しが起こり得ます。
MARKET EYEの見方
今回のサウジ市場の上昇は、「中東リスクが消えた」ことを示す動きではありません。むしろ原油高が続くことで産油国株が買われ、海運・物流にも資金が向かった面があります。一方でSaudi Aramcoの積み込み再開は、供給回復の現実的な材料です。
したがって週明けの日本株では、一つのニュースだけで方向を決めず、原油価格、ホルムズ海峡の実際の船舶動向、米国制裁の対象範囲、ドル円の4点をセットで確認したいところです。最大のイベントは日本時間8月25日午前3時のベッセント米財務長官会見です。
関連分析
東京電力ホールディングスの株価分析 / 日米セクター連動分析
情報源・確認先
- Reuters:8月23日の湾岸株式市場
- Reuters:8月21日の原油市場
- Reuters:Saudi Aramcoのホルムズ海峡内積み込み再開
- Reuters:米国の対イラン追加制裁とベッセント財務長官会見
ご注意
本記事は公開情報を基に市場の動きを解説する情報提供を目的としたもので、特定の金融商品・銘柄の売買を推奨するものではありません。地政学ニュースは短時間で状況が変わるため、実際の投資判断では最新の価格と公式発表をご確認ください。

