金4,390ドル、銀3.3%高。リヤド攻撃で原油104ドル、今週は安全資産買いだけで読めない

対象日:2026年9月21日 | 情報確認:2026-09-21T08:13:05+09:00 JST
2026年9月21日 コモディティ週初版
金は4,390ドル、銀は66.70ドル。
週末のリヤド攻撃で原油が再び動いた
先週は金が4週ぶりの週間上昇となり、銀・プラチナ・パラジウムも週末に反発しました。しかし、週明けのブレント原油は104.68ドルへ上昇。安全資産需要と、原油高による金利上昇リスクが同時に存在する週です。
先週末の貴金属市場は、FOMC直後の急落から大きく切り返しました。9月18日のスポット金は1トロイオンス4,390.11ドル、銀は66.70ドル、プラチナは1,812.50ドル、パラジウムは1,310.20ドルです。金は1.2%高、銀は2.3%高、プラチナは2.2%高、パラジウムは1.5%高となり、4つの貴金属がそろって上昇しました。
ただし、週明けは同じシナリオをそのまま延長できません。週末にイエメンのフーシ派がサウジアラビアの首都リヤドへミサイルとドローンによる攻撃を行い、原油市場は再び供給不安を意識しました。21日早朝のブレント原油は前週末比0.81ドル高の104.68ドル、WTIは0.76ドル高の101.06ドルです。
金にとって地政学リスクは安全資産需要を呼び込みます。一方、原油高がインフレを再加速させ、米国債利回りと実質金利を押し上げると、利息を生まない金には逆風です。今週の焦点は「危機だから金が上がるか」ではなく、安全資産買いと金利上昇のどちらが強くなるかです。
📊 週初の価格を一枚で整理
9月18日の確認値
金:4,390.11ドル
銀:66.70ドル
プラチナ:1,812.50ドル
パラジウム:1,310.20ドル
9月14日の週初確認値と比べると、金は約0.6%高、銀は約3.3%高、プラチナは約1.1%高、パラジウムは約0.1%高です。最も強かったのは銀で、パラジウムはほぼ横ばいでした。「貴金属が全面的に買われた」というより、金の戻りに工業需要を持つ銀が上乗せされ、白金族は慎重に追随した形です。
金先物の12月限は4,424.90ドルで引けました。現物価格より先物が高い状態は、保管費や金利など複数の要因を含みます。先物の数字だけを見て現物も同じ水準へ上がると決めつけることはできません。今週は現物金が4,400ドル近辺を回復できるかと、先物の上昇に新しい買い建玉が伴うかを分けて確認します。
💰 金4,390ドルへの反発は何を意味するか
金は先週、4週ぶりの週間上昇となりました。FRBは9月16日に政策金利を0.25ポイント引き上げ、3.75%から4.00%の範囲としました。通常、利上げは金に逆風です。国債や預金の利回りが上がると、利息のない金を持つ機会費用が増えるためです。
それでも金が戻った理由は、FOMC後に売りが傾きすぎたことと、原油が110ドル近辺から104ドル台へ下がったことでインフレ懸念がいったん和らいだことです。米10年実質金利は9月16日の2.68%から17日は2.61%へ低下しました。実質金利は名目金利から期待インフレ率を差し引いたもので、金の保有コストを考える際の重要な目安です。
しかし、週末に原油の前提が変わりました。フーシ派によるリヤド攻撃は、サウジ国内の設備被害だけでなく、紅海とバブ・エル・マンデブ海峡の輸送リスクを再び意識させます。安全資産としての金買いが増えても、原油高が米10年債利回りを5%より上へ押し上げれば、上値を抑える力も強くなります。
💡 今週の読み方
原油と金が同時に上がるだけなら、安全資産買いかインフレヘッジの可能性があります。そこへ米10年債と実質金利の上昇が加わり、金が失速するなら、金利の逆風が勝っています。価格を一つずつ見るより、原油・金・金利の組み合わせを見る方が相場の意味をつかみやすくなります。
🏦 ETFと中央銀行は中期の土台、先物は短期の温度
世界黄金協会によると、8月の世界の金ETFには180億ドルが流入し、保有量は121トン増の4,189トンとなりました。金ETFは取引所で売買でき、運用会社が裏付けとなる金を保有する仕組みです。資金流入が続けば現物需要の支えになります。直近で確認できる7月の中央銀行購入も、差し引き23トンの買い越しでした。
この2つは金の中長期的な下支えですが、週末の値動きを直接説明する指標ではありません。ETFは月次集計、中央銀行購入も公表に時間差があります。今週のように地政学と金利が短時間で動く場面では、先物市場の持ち高が短期の温度を映します。
CFTCの9月15日時点の報告では、COMEX金先物の非商業部門は25万8,059枚の買い、2万7,721枚の売りで、差し引き23万338枚の買い越しでした。前週から買い越しは1,622枚縮小しています。金価格が週末に反発した一方、集計日までの投機筋は積極的に買い増していませんでした。
これは反発が弱いと断定する材料ではありません。CFTCは火曜日時点の持ち高で、金曜日の上昇を含まないからです。次回報告で買い越しが増えれば、新しい資金が反発を支えたと確認しやすくなります。価格が上昇しても買い越しが減る場合は、売り方の買い戻し中心だった可能性を考えます。
🥈 銀66.70ドル、金より強いが銅との温度差に注意
銀は週初から約3.3%上昇し、4つの貴金属で最も強い動きでした。銀には金と同じ投資・宝飾需要に加え、太陽光発電、電子部品、電気設備などの工業需要があります。金の反発とハイテク・設備投資期待が重なると、値幅が大きくなりやすい資産です。
一方、CFTCの銀先物では非商業部門が3万5,395枚の買い、1万69枚の売りで、差し引き2万5,326枚の買い越しでした。前週から723枚縮小しています。価格上昇の勢いに対して、9月15日時点の投機ポジションは拡大していません。
さらに銅先物の非商業部門は差し引き7万5,134枚の買い越しでしたが、前週から1万7,342枚も縮小しました。銅は送電網、データセンター、自動車、住宅に使われるため、世界の設備投資と景気の温度計です。銀が上がる一方で銅の買い越しが急減したことは、銀高のすべてを工業需要の改善で説明できないことを示します。
🔍 銀の継続条件
66ドル台を維持するだけでなく、銅の持ち高縮小が止まり、米国・中国のPMIや半導体株が底堅く推移することが重要です。金だけが上がり、銀と銅が下落するなら安全資産中心。銀と銅が同時に上がるなら工業需要の信頼回復と読みやすくなります。
⚙️ プラチナとパラジウム、同じ白金族でも需給は違う
プラチナは1,812.50ドルまで戻し、週初比約1.1%高でした。世界白金投資協議会は2026年通年を26.5万オンスの供給余剰と見込んでいます。上期の投資資金流出や需要減少が背景です。ただし、過去3年の供給不足で在庫は減り、生産が南アフリカへ集中する構造は変わっていません。
CFTCでは、プラチナ先物の非商業部門が2万6,250枚の買い、1万1,030枚の売りで、差し引き1万5,220枚の買い越しでした。前週から756枚縮小し、総建玉も2,332枚減少しました。価格は戻っても、9月15日時点では資金参加が広がっていません。1,800ドル台の維持に加え、建玉の回復が必要です。
パラジウムは1,310.20ドルで、週初比では約0.1%高とほぼ横ばいです。CFTCの非商業部門は6,284枚の買いに対し1万434枚の売りで、差し引き4,150枚の売り越しでした。売り越し幅は前週より438枚拡大しています。
パラジウムはガソリン車の排ガス浄化触媒に使われますが、電気自動車の普及とプラチナへの代替が長期的な逆風です。一方、供給はロシアと南アフリカへ集中しています。自動車需要の改善か、鉱山・物流・制裁に関する具体的な供給障害がなければ、金の安全資産買いだけで上昇を維持するのは難しい状況です。
🛢️ 原油104.68ドル、リヤド攻撃が週初の前提を変更
先週末まで原油は、サウジの供給回復策や中東の供給障害に対する懸念後退で下落していました。原油安はインフレ懸念を和らげ、金の買い戻しを助けました。ところが週末の攻撃で、原油市場は再び地政学リスクを価格へ織り込み始めています。
21日早朝のブレント原油は104.68ドル、WTIは101.06ドルです。上昇率はともに1%未満で、現時点では供給が大規模に失われたと市場が判断しているわけではありません。ただし、攻撃対象が首都や空港周辺に及び、紅海の輸送路をめぐる緊張も続くため、追加攻撃や設備停止が確認されれば値幅が広がる可能性があります。
CFTCのWTI先物では非商業部門が13万5,905枚の買い越しで、前週から674枚縮小しました。価格が高くても投機筋が一方向へ買い増した形ではありません。今週は見出しの大きさより、実際に何バレルの生産・輸送が止まり、どれだけ復旧したかが重要です。
天然ガス先物では非商業部門の売り越しが22万1,587枚と大きく、前週から売り越しが1,820枚拡大しました。原油の地政学プレミアムと、米天然ガスの需給評価は同じではありません。原油高だけを見てエネルギー全体が一方向に上がると考えない方が安全です。
🌍 今週のイベントは中東、米中首脳会談、PMI
今週は国連総会の一般討論が9月22日から始まります。トランプ米大統領は現地時間22日午前に演説し、イランの核問題や中東情勢が主要テーマになる見通しです。湾岸諸国首脳との会談で緊張緩和の道筋が示されれば原油の上値は抑えられます。反対に、制裁や軍事行動に踏み込む発言が増えれば、原油と金が同時に買われる可能性があります。
9月24日には米中首脳会談が予定され、AI、貿易、レアアースなど重要鉱物の供給が議題になります。レアアースは貴金属ではありませんが、電気自動車、半導体、再生可能エネルギーの供給網に直結します。協議が安定へ向かえば銀・銅・白金族の工業需要にはプラスです。対立が深まれば、景気敏感金属には逆風となります。
米国を含む主要国ではPMIの公表が予定されています。PMIは企業の購買担当者への調査で、50を上回ると活動拡大、下回ると縮小の目安です。米国では耐久財受注も注目されます。景気が強ければ銀・銅には好材料ですが、同時に追加利上げ観測が強まり、金には金利面の逆風が出るという二面性があります。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、原油だけでなく米国経済の幅広い分野でインフレが高すぎると述べました。市場では10月の追加利上げ観測が残っています。今週の経済指標は「強ければ全部の資産に良い」わけではなく、工業需要を押し上げる効果と、金利を押し上げる効果のどちらが大きいかを見ます。
💱 日本から見るとドル円もリターンを変える
日本銀行は9月18日に政策金利を1.25%へ引き上げましたが、円は1ドル157円前後へ下落しました。米国の政策金利は3.75%から4.00%で、日米金利差はなお大きく残ります。円建てで金を見る場合、ドル建て金価格とドル円の両方が動くため、海外の金が横ばいでも円安なら国内価格は上がりやすくなります。
反対に、国連総会や米中協議をきっかけに地政学リスクが和らぎ、円高とドル建て金安が同時に進めば、円建て金は二重の下押しを受けます。日本の投資家は4,390ドルという数字だけでなく、ドル円、国内金利、国内の金価格を同じ時刻で照合する必要があります。
今後の見通し
対象期間
2026年9月21日から25日までを中心に、週末のリヤド攻撃、国連総会、米中首脳会談、PMIが貴金属とエネルギーへ波及する過程を見ます。
MARKET EYEの基本的な見方
確認できた事実は、金が4,390.11ドルへ上昇し4週ぶりの週間高、銀が66.70ドルへ上昇した一方、CFTCでは金・銀・銅・プラチナの投機的な買い越しが縮小したことです。週明けにはブレント原油が104.68ドルへ上昇しました。ここからの分析では、貴金属の下値にはETF・中央銀行需要と地政学リスクがある一方、原油高と米実質金利上昇が上値を抑えるため、方向を一つに固定しません。
好転する条件
金は4,300ドル台を保ちながら米10年実質金利が2.61%付近から低下し、次回CFTCで買い越しが回復すること。銀は66ドル台を維持し、銅・PMI・半導体株が同時に改善すること。プラチナは1,800ドル台の維持と建玉回復、パラジウムは1,300ドル台の維持と自動車需要または供給制約の確認が必要です。
悪化・見方を変える条件
原油高で米10年債利回りが5%を明確に上回り、実質金利も上昇する中で金が4,300ドルを割る場合です。銀と銅が同時に下落し、プラチナの建玉減少、パラジウムの売り越し拡大が続く場合は、週末の反発を買い戻し中心とみて慎重度を上げます。
次に確認する指標・イベント
9月22日からの国連総会一般討論、現地時間22日午前のトランプ米大統領演説、24日の米中首脳会談、主要国PMI、米耐久財受注を確認します。市場ではブレント原油、米10年債・10年実質金利、ドル指数、金ETF、CFTC建玉、紅海とホルムズ海峡の通航状況を同じ順番で追います。
✅ 今週はこの5点を確認
- 金4,300ドル台を維持できるか。安全資産需要が実質金利の上昇を上回るかを見る基準です。
- ブレント原油104.68ドルからの方向。追加攻撃と実際の供給停止量を確認します。
- 米10年債5%、10年実質金利2.61%。金の保有コストが再び上がるかを見ます。
- 銀と銅が同時に強いか。銀高に工業需要の裏付けがあるかを判断します。
- CFTCの次回建玉。価格上昇に新しい買いが加わったか、買い戻し中心だったかを確認します。
前回の週初記事ではFOMC前の金4,363ドルと原油108ドルを起点に条件を整理しました。今回はFOMCを通過し、金が4,390ドルへ戻った一方、週末の攻撃で原油が再上昇した点が差分です。背景は金4,363ドルと原油108ドル|FOMC週の貴金属見通し、前週の急変は金4,355ドル・銀4.6%安|原油107ドル後の貴金属見通しで確認できます。
今週の結論は、金の安全資産需要だけで方向を決めないことです。リヤド攻撃は金と原油の買い材料ですが、原油高がインフレと米金利を押し上げれば金の上値を抑えます。銀は銅、白金族は自動車需要と先物建玉を組み合わせて見ることで、4つの貴金属を同じ物語で読んでしまう誤りを避けられます。
本記事は公表情報を基にした市場解説であり、特定の金融商品や商品先物の売買を推奨するものではありません。価格、金利、為替は取得時刻と市場により変動します。
情報源・参考資料
- 補足情報 Reuters|Gold rises to one-week high, heads for weekly gain
- 補足情報 Reuters|Oil rises after Houthi attack on Saudi capital
- 補足情報 Reuters|Iran and US trade threats after Houthi attacks
- 補足情報 Reuters|Trump meetings as UN General Assembly gathers
- 補足情報 Reuters|US-China talks on AI, trade and critical minerals
- 補足情報 Reuters|Fed Kashkari says inflation remains too high
- 一次情報 Federal Reserve|FOMC statement, September 16, 2026
- 一次情報 CFTC|COMEX futures-only commitments, September 15, 2026
- 一次情報 CFTC|NYMEX futures-only commitments, September 15, 2026
- 一次情報 Federal Reserve Bank of St. Louis|10-year real Treasury yield
- 一次情報 World Gold Council|Global gold-backed ETF holdings and flows
- 一次情報 World Platinum Investment Council|Platinum Quarterly Q2 2026
- 一次情報 United Nations|General Assembly high-level week 2026
- 一次情報 People's Bank of China|Loan Prime Rate
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