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金4,274ドル・銀4.4%安。中東リスクよりドルと実質金利が勝った一週間、来週の分岐点はPCEと雇用統計

MARKET EYE 編集部 2026.09.25 19:41 コモディティの記事一覧を見る →
金4,274ドル・銀4.4%安。中東リスクよりドルと実質金利が勝った一週間、来週の分岐点はPCEと雇用統計

2026年9月25日 コモディティ週間版

金は4,274ドル、銀は週間4.4%安。
危機よりドルと実質金利が勝った一週間

中東の供給不安が消えない中でも、金・銀・プラチナ・パラジウムはそろって週初の水準を下回りました。米10年実質金利は2.76%へ上昇し、ドル指数は101.26まで上昇。「地政学リスクがあれば金高」という単純な図式より、保有コストとドル高の圧力が強く表れた週です。

9月24日の米市場終了後に近い確認値では、スポット金は1トロイオンス4,274.10ドル、銀は63.78ドル、プラチナは1,755.60ドル、パラジウムは1,261.00ドルでした。9月18日の確認値と比べると、金は約2.6%安、銀は約4.4%安、プラチナは約3.1%安、パラジウムは約3.8%安です。

4つが同時に下がったからといって、需要の事情まで同じだったわけではありません。金は実質金利とドル、銀はそこへ投資資金の値動きの大きさが加わり、プラチナとパラジウムは自動車・工業需要と供給構造が影響します。今週の数字は、貴金属全体へ共通する金融環境の逆風が、それぞれ固有の材料を上回った結果と読むのが自然です。

📊 今週の貴金属4種を一枚で整理

9月24日米市場終了後に近い確認値

金:4,274.10ドル 週初基準比 約2.6%安

銀:63.78ドル 同 約4.4%安

プラチナ:1,755.60ドル 同 約3.1%安

パラジウム:1,261.00ドル 同 約3.8%安

金銀比価は約67倍です。これは金価格を銀価格で割った数字で、同じ金額の金が銀何オンス分に相当するかを示します。比率が上がると銀が金より弱く、下がると銀が相対的に強いと読むのが基本です。今週は銀の下落率が金を上回り、安全資産と工業金属の両方の性格を持つ銀で値動きが増幅されました。

COMEX金先物の9月24日清算値は4,263.00ドルで、前日比0.43%安でした。スポットと先物には限月、金利、保管費、取引時刻の違いがあるため数字は一致しません。それでも現物4,274ドルと先物4,263ドルがともに週初より低いことから、単一の価格配信だけで起きた差ではないと確認できます。

💰 金4,274ドル、地政学リスクがあっても下がった理由

金が下がった最大の手掛かりは、ドルと金利です。ドル指数は9月18日の100.22から24日は101.26へ約1.0%上昇しました。金は国際市場で主にドル建てで取引されるため、ドル高になると他通貨を使う買い手には割高になります。世界の需要が急に消えなくても、為替だけで購入の負担が増える仕組みです。

金利の影響はさらに直接的です。米10年国債利回りは9月18日の5.01%から23日は5.11%へ上昇しました。米10年実質金利も2.68%から2.76%へ上がっています。実質金利は物価上昇の影響を差し引いた利回りの目安で、利息を生まない金を持つ機会費用を考える重要な指標です。国債で得られる実質的な利回りが高くなるほど、金には資金をつなぎ留めにくい環境になります。

中東情勢は本来、安全資産としての金を支える材料です。しかし今週は、原油高がインフレ懸念を再燃させ、米金利を押し上げる経路も同時に働きました。危機のニュースで一時的に金が買われても、その後に「インフレが長引き、政策金利も高止まりする」という見方が強まれば、買いが続かないことがあります。今週の金安は、安全資産需要が消えたのではなく、金利とドルの逆風を打ち返せなかったと整理できます。

🏦 ETF・中央銀行・先物建玉は何を示すか

世界黄金協会の直近月次データでは、8月の世界の金ETFへ180億ドルが流入し、保有量は121トン増えて4,189トンとなりました。金ETFは投資家から集めた資金で裏付けとなる金を保有する仕組みです。中央銀行の直近確認値も7月に差し引き23トンの買い越しで、中長期の現物需要は下値を支える要素です。

ただし、ETFと中央銀行の統計は月次であり、今週の数日間の下落を止める即効薬ではありません。月次の買いが続いていても、ドル高や実質金利上昇で短期資金が引けば、日々の価格は下がります。基礎需要と短期価格を混同しないことが大切です。

CFTCの建玉は、9月25日朝の確認時点で最新公表が9月15日時点です。金先物の非商業部門は差し引き23万338枚の買い越し、銀は2万5,326枚の買い越し、プラチナは1万5,220枚の買い越し、パラジウムは4,150枚の売り越しでした。今週の下落を含む次回報告はまだ公表前のため、下げが新規売りの増加なのか、買い持ちの手じまいなのかは現時点では断定できません。

🔍 次回CFTCで見る順番

価格下落と同時に買い越しが大きく減れば手じまい中心、売り建玉と総建玉が増えれば新規の弱気資金が加わった可能性があります。価格だけでなく、買い・売り・総建玉の3つを分けて確認します。

🥈 銀4.4%安、銅高と逆方向に動いた意味

銀は63.78ドルまで下がり、4つの貴金属で最も大きい下落率となりました。銀には投資対象として金に連動する面と、太陽光パネル、電子部品、電力設備に使われる工業金属の面があります。金利上昇時には投資需要が弱くなりやすく、市場規模が金より小さいため、売買が傾くと値幅が大きくなります。

興味深いのは、銅が逆に高値圏を維持したことです。9月24日の銅は1ポンド6.70ドル前後、別市場の表示では1トン1万4,765ドル前後でした。送電網、データセンター、電気自動車で使われる銅は、供給制約と設備投資需要を背景に記録的な水準に近い状態です。

銀が下がり、銅が上がった組み合わせは、銀安を世界景気の悪化だけで説明できないことを示します。工業需要への期待が一斉に崩れたなら、銅にも同じ方向の圧力が出やすいからです。今週は銀の投資商品としての側面、つまりドル高、実質金利上昇、ポジション調整の影響がより強かったと考えられます。

来週、銀が反発しても銅が失速するなら、貴金属全体の買い戻しが中心かもしれません。銀と銅がそろって上昇し、半導体・電力設備関連にも買いが広がるなら、工業需要の裏付けが強まります。銀を見るときは金との比較だけでなく、銅との組み合わせが役立ちます。

⚙️ プラチナ1,755ドル、パラジウム1,261ドル

プラチナは週初基準比約3.1%安の1,755.60ドルでした。世界白金投資協議会は2026年通年を26.5万オンスの供給余剰と見込んでおり、上期の投資資金流出や需要減速が重荷です。一方、過去数年の供給不足で地上在庫は減っており、生産が南アフリカへ集中する構造も変わりません。余剰見通しだけで長期下落を決めつけることも、供給集中だけで上昇を決めつけることもできない市場です。

パラジウムは約3.8%安の1,261.00ドルでした。主用途はガソリン車の排ガス浄化触媒で、電気自動車の普及とプラチナへの代替が長期的な逆風になります。一方で供給はロシアと南アフリカに集中し、制裁、物流、鉱山操業の変化に反応しやすい特徴があります。

今週はパラジウムが1,300ドル台を維持できず、CFTCの最新確認値も売り越しです。自動車販売や生産計画の改善、または実際の供給障害が確認できなければ、金の安全資産買いだけで白金族全体を押し上げるのは難しい状況です。プラチナは1,800ドル、パラジウムは1,300ドルを回復できるかが、心理的な節目として意識されます。

🛢️ 原油は急落と反発、供給回復と攻撃が綱引き

原油は一方向ではありませんでした。サウジアラビアはホルムズ海峡を迂回できる東西パイプラインを減量運転で再開しました。ただし、日量700万バレル規模の能力を十分に戻すには6週間から8週間かかる可能性があると伝えられています。供給経路の回復期待でブレントは一時100ドルを下回りました。

その後、フーシ派の攻撃と追加的な供給不安で再び反発しました。9月25日早朝の確認画面ではブレントは106ドル台、WTIは94ドル台です。価格差と水準は限月や取引時刻で変わるため、今週は終値一つよりも「迂回輸送が何バレル増えたか」「港湾とパイプラインが実際にどの程度動いたか」「追加攻撃で設備停止が発生したか」を優先して見ます。

原油高は金に二つの相反する影響を与えます。戦争や供給不安を映す上昇なら安全資産需要を呼びますが、ガソリン、物流、化学原料の価格を通じて物価を押し上げると、金利上昇を招きます。今週は後者が強く意識され、原油が上がる局面でも金は下押しされました。

米天然ガスは1百万BTU当たり3.17ドル前後でした。原油とは生産、在庫、輸送の仕組みが異なるため、中東のニュースだけで同じ方向へ動くとは限りません。一方、欧州ではガス在庫の低さとLNG調達競争が冬のリスクです。エネルギー価格が家計の光熱費や企業の製造コストへ波及するまでには時間差がありますが、長引けば金属加工、化学、輸送などエネルギー集約産業の利益にも影響します。

💱 ドル高は日本の金価格には二つの顔を持つ

ドル指数は今週約1.0%上昇しました。ドル建て金にとっては逆風ですが、日本から円建てで見る場合は話が複雑です。円安が同時に進めば、ドル建て金の下落を為替が一部打ち消します。逆にドル建て金安と円高が重なれば、国内金価格には二重の下押しになります。

このため、海外記事の「金2.6%安」を国内の金価格へそのまま当てはめることはできません。確認するときは同じ時刻のドル建て金、ドル円、国内小売価格または先物価格を並べます。為替の時刻がずれるだけでも見かけの騰落率は変わるため、比較条件をそろえることが重要です。

📅 来週はPCEと米雇用統計、金利の再評価へ

来週の大きな分岐は、9月30日午前8時30分(米東部時間、日本時間同日午後9時30分)に公表予定の米8月個人所得・個人消費支出です。ここにはFRBが重視するPCE物価指数が含まれます。同時刻には米4〜6月期GDPの確報関連も予定され、物価と成長の両面から金利見通しが見直される可能性があります。

10月2日午前8時30分(米東部時間、日本時間同日午後9時30分)には米9月雇用統計が予定されています。雇用や賃金が強ければ、追加利上げまたは高金利長期化の見方が強まり、ドルと実質金利を通じて金の上値を抑えやすくなります。弱い数字なら金利低下を通じて金には追い風ですが、景気不安が強すぎれば銀・銅・白金族の工業需要には逆風になります。

今週末にはCFTCの新しい建玉報告も控えます。今回の下落局面で金・銀の買い越しがどれだけ減ったか、パラジウムの売り越しが広がったかを確認できれば、来週の戻りが新しい買いなのか、短期的な買い戻しなのかを判断しやすくなります。

今後の見通し

対象期間
2026年9月25日から10月2日まで。週末のCFTC建玉、9月30日の米PCE、10月2日の米雇用統計を通じ、ドル・実質金利・原油が貴金属へ与える影響を確認します。

確認できた事実
9月18日から24日にかけ、金は約2.6%、銀は約4.4%、プラチナは約3.1%、パラジウムは約3.8%下落しました。ドル指数は100.22から101.26、米10年実質金利は2.68%から2.76%へ上昇しています。銅は高値圏を維持し、原油は供給回復期待による急落と攻撃後の反発を繰り返しました。

MARKET EYEの基本的な見方
中長期では金ETFと中央銀行購入が下値を支える一方、来週前半はドルと実質金利の影響が優先されやすいとみます。銀は金より値幅が大きく、銅との連動が戻るかが重要です。白金族は金の動きだけでなく、自動車需要、供給障害、先物建玉の裏付けが必要です。方向を一つに固定せず、指標後の組み合わせで判断します。

好転する条件
金が4,300ドルを回復し、ドル指数が101を下回り、米10年実質金利が2.76%から低下すること。銀は64ドル台を回復したうえで銅も高値圏を保つこと。プラチナは1,800ドル、パラジウムは1,300ドルを回復し、次回CFTCで建玉と買い需要の改善が確認できることです。

悪化・見方を変える条件
PCEや雇用統計を受けてドル指数が101台で上昇を続け、米10年債が5.11%、実質金利が2.76%をさらに上回る中で、金が4,200ドル方向へ下値を切り下げる場合です。銀と銅が同時に下落し、白金族で売り建玉が増える場合は、金融環境だけでなく工業需要への懸念も強まったとみて慎重度を上げます。

次に確認する指標・開示・イベント
9月25日公表予定のCFTC建玉、9月30日午前8時30分(米東部時間)の米8月個人所得・個人消費支出とPCE物価、同時刻の米GDP確報関連、10月2日午前8時30分の米9月雇用統計を確認します。市場ではドル指数、米10年債・実質金利、ブレント原油、ホルムズ海峡とサウジ東西パイプラインの実際の輸送量を追います。

✅ 来週に持ち越す5つの確認点

  1. 金が4,300ドルを回復できるか。単なる値段の節目ではなく、ドル高と実質金利上昇を吸収できるかを見る基準です。
  2. 銀と銅が同じ方向へ動くか。銀の反発に工業需要の裏付けがあるかを見分けます。
  3. 実質金利2.76%の方向。PCEと雇用統計後も上がるなら、金の保有コストはさらに重くなります。
  4. 原油高の理由。実際の供給停止なら金の安全資産需要、インフレだけなら金利の逆風が強くなりやすい点を確認します。
  5. CFTCで新規売りが増えたか。手じまいによる下落か、弱気資金の参入かで戻りの性質が変わります。

週初は金4,390ドル・銀3.3%高|リヤド攻撃と原油104ドル後の貴金属見通しで、安全資産需要と金利上昇の綱引きを整理しました。今週末までの差分は、原油の供給不安が続いてもドルと実質金利の上昇が貴金属4種を押し下げたことです。中央銀行購入の背景は中国はなぜ米国債を売ってゴールドを買う?ドル危機・金融制裁との関係を解説で詳しく整理しています。

今週の結論は、地政学ニュースの大きさだけで金の方向を決めないことです。金は危機に反応しますが、同時にドルと実質金利にも反応します。銀は銅、プラチナとパラジウムは自動車需要と供給構造を重ねることで、同じ「貴金属」という名前に隠れた違いが見えてきます。

本記事は公表情報を基にした市場解説であり、特定の金融商品や商品先物の売買を推奨するものではありません。価格、金利、為替は取得時刻と市場により変動します。

情報源・参考資料

  1. 補足情報 Alex Lexington|Spot precious metals prices, September 24, 2026
  2. 補足情報 Kitco|Gold spot price, September 24, 2026
  3. 補足情報 Morningstar / Dow Jones|COMEX gold settlement, September 24, 2026
  4. 一次情報 Federal Reserve Bank of St. Louis|10-year Treasury yield
  5. 一次情報 Federal Reserve Bank of St. Louis|10-year real Treasury yield
  6. 補足情報 WSJ Market Data|U.S. Dollar Index historical prices
  7. 一次情報 CFTC|Commitments of Traders reports
  8. 一次情報 World Gold Council|Global gold-backed ETF holdings and flows
  9. 一次情報 World Platinum Investment Council|Platinum Quarterly
  10. 補足情報 Reuters|Saudi Arabia restarts East-West oil pipeline
  11. 補足情報 Reuters|Oil swings on Gulf supply hopes and geopolitical risk
  12. 補足情報 Trading Economics|Brent crude oil price
  13. 補足情報 Trading Economics|Copper price
  14. 一次情報 IEA|Copper prices and strategic supply pressures
  15. 一次情報 U.S. Bureau of Economic Analysis|Release schedule
  16. 一次情報 U.S. Bureau of Labor Statistics|October 2026 release schedule

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